講義の内容 

単独開講科目のうち、セミナー科目を除く、小埜担当の授業の紹介です。

2003年度前期

国文学演習B (Seminar on Japanese Literature B) 

学期 前期
曜日・時限 木・5
標準履修学年 学部4年

授業概要・目標
 明治・大正・昭和期の各時代を代表する詩テクストを取り上げ、それを精読する作業を通し、日本の近代の詩の特質ならびに詩史について考えます。同時に詩を精読する作業の中で、詩を読み深めるための方法を学び、そこで養った力が教育現場で活かせるようにしていきます。本授業では、受講者一人一人が詩の分析を担当し、分析内容を授業時に発表する演習形式をとります。テクストは主に中学校・高等学校の国語教科書掲載の詩を用います。

授業内容

1 ガイダンス
2 高村光太郎「ぼろぼろな駝鳥」
3 中原中也「春日狂想」
4 室生犀星「寂しき春」
5 萩原朔太郎「くさつた蛤」
6 宮沢賢治「蠕虫舞手」
7 三好達治「乳母車」
8 立原道造「はじめてのものに」
9 金子光晴「富士」
10 井上靖「シリア砂漠の少年」
11 西脇順三郎「燈台へ行く道」


教科書・参考書
 プリントを配布する。


国文学特論B (Japanese Literature B)

学期 前期
曜日・時限 金・2
標準履修学年 大学院

授業概要・目標
 郷土の童話作家小川未明と、イーハトブの童話作家宮沢賢治の文学世界の特色を、テクストの精読を通して考えていきます。未明は童話の他に小説を多く書き、また賢治は童話の他に詩を沢山つくっています。それぞれの小説や詩の作品世界との関わりも考慮しつつ、「日本のアンデルセン」と呼ばれた小川未明の再評価につながる観点や賢治文学の新しい側面を探っていきます。本講義のキーワードを挙げておきます。〈無垢〉〈民俗〉〈宗教〉〈幻想〉〈怒り〉。毎回1作品ずつ取り上げ、先行研究に留意しテクストの新たな読みを探っていくとともに、テクストを読むとはどのような営為か、<読む>ための技能の習得をふくめ学習していきます。

授業内容
1 ガイダンス 小川未明
2 ガイダンス 宮沢賢治
3 小川未明「港に着いた黒んぼ」
4 宮沢賢治「オツベルと象」
5 小川未明「雪くる前の高原の話」「ある夜の星たちの話」
6 宮沢賢治「毒蛾」「化物丁場」
7 小川未明「戦友」「ぼくはこれからだ」
8 宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」
9 小川未明「靴屋の主人」
10 宮沢賢治「フランドン農学校の豚」
11 小川未明「老旗降り」 
12 宮沢賢治「貝の火」
13 小川未明「とうげの茶屋」「子供は悲しみを知らず」

教科書・参考書
 新潮文庫『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』『小川未明童話集』



2003年度後期

国文学講読B(Readings in Japanese Literature B)

学期 後期
曜日・時限 火・4
標準履修学年 学部3年

授業概要・目標
 昭和60年代以降に発表された日本の短編小説について考えます。われわれが日々の生活の中でリアルに感じ取っているある種の違和感や閉塞感、社会で起こっている理解しがたい数々の事件の不気味な感触は、現代の文学においてどのように受け止められてきたのでしょう。現代文学はよくこの現実を把捉しえてきたのでしょうか。現代の小説を一つ一つ精緻に読み解く作業をつうじて、現代文学と今日の時代状況のかかわりについて検証していきます。同時にいかに読めばテクストの解釈がスムーズに行えるかといった読むための技能の習得を目指し、小説を読む意義についても触れながら、学習者が現場で文学教育を行うさいの基礎力を養うことを目標とします。

授業内容
1 ガイダンス
2 阿部昭「小動物の運命」(「海燕」昭和60年12月)
3 宮本輝「バケツの底」(「文学界」昭和61年2月)
4 水上勉「南京の秋」(「新潮」昭和62年1月)
5 新井満「アルカディアへの旅」(「ガリバー」平成元年12月)
6 山田詠美「晩年の子供」(「新潮」平成2年1月)
7 立松和平「卵洗い」(「群像」平成3年4月)
8 吉本ばなな「とかげ」(「小説新潮」平成4年8月)
9 車谷長吉「静かな家」(「文学界」平成6年12月)
10 山本道子「牡蠣とムール貝」(「文学界」平成7年2月)
11 村上春樹「七番目の男」(「文芸春秋」平成8年2月)
12 島田雅彦「ミス・サハラを探して」(「群像」平成9年10月)

教科書・参考書
 プリントを配布する。


国文学演習B (Seminar on Japanese Literature B)

学期
後期
曜日・時限 金・3
標準履修学年 大学院

授業概要・目標

 昭和期に活躍した文学者の中から三島由紀夫と太宰治を取り上げ、二人の文学世界の差異性と同質性について考えます。従来、〈仮面〉と〈道化〉といったキーワードで二人の文学世界は対比されることが多かったようですが、本授業では読者に向けられた眼差しと翻案の方法の面から、三島と太宰の文学世界をとらえていきます。本授業は、演習形式で行います。演習では、以上の問題の解決を念頭に置き、当該作品を丹念に分析し、読者やテクスト生成の問題を考察するとともに、テクストの主題の読み取りや構造の把握を通じて、受講者それぞれが物語を読むための技能を十分身につけられるよう工夫していきます。

授業内容
1 ガイダンス
2 研究発表1
3 研究発表2
4 三島由紀夫「獅子」(「序曲」昭和23年12月)
5 三島由紀夫「ラディゲの死」(「中央公論」昭和28年10月臨時増刊)
6 三島由紀夫「志賀寺上人の恋」(「文藝春秋」昭和29年10月)
7 三島由紀夫「潮騒」(『潮騒』昭和29年6月 新潮社)
8 三島由紀夫「椿説弓張月」(「海」昭和44年11月)
9 太宰治「裸川」(『新釈諸国噺』昭和20年1月、以下同じ)
10 太宰治「義理」
11 太宰治「女賊」
12 太宰治「赤い太鼓」
13 太宰治「粋人」

教科書・参考書
 新潮文庫『潮騒』(三島由紀夫)『お伽草紙』(太宰治)及びプリントを使用。