2004年度前期

国文学演習B (Seminar on Japanese Literature B) 

学期 前期
曜日・時限 木・5
標準履修学年 学部4年

授業概要・目標
 日本の近代文学史を見直し、書き換えていこうとする気運が高まっています。鈴木貞美著『日本の「文学」を考える』その他を演習テクストとし、そこに書かれた事柄や問題点について調査・整理し、その内容及び演習者の見解をプレゼンテーションによる伝達効果を意識しつつ発表していきます。その営為を通じ、近代文学史を新たに構想する視点(作品相互に関連性を見出す柔軟な視点)を学ぶとともに、文学事象の調査の方法を学びます。あわせて調査内容を受講者に効果的に伝える発表技能の習得を目指します。

授業内容
1 ガイダンス
2 「「文学」の現在」
3 「発明された「伝統」」
4 私小説の検討:志賀直哉「濠端の住まい」
5 加藤周一「文学とは何であったか」
6 伊藤整「近代日本の作家の創作方法」
7 伊藤整「求道者と認識者」
8 三好行雄「日本の近代化と文学」
9 三好行雄「反近代の系譜」
10 まとめ


国文学特論B (Japanese Literature B)

学期 前期
曜日・時限 金・2
標準履修学年 大学院

授業概要・目標
 文学テクストを読むための理論は、今日、文学のみに限った狭い理論によってではなく、ありとあらゆる現代思想を相手に賄われているといってよいでしょう。理論の学習は次の新たな理論の学習へとわれわれを導き、終結点を見ません。それゆえ理論に手を出すことにためらいをもつ方も多いと思われます。伝統的な研究方法にのっとり、実証研究を進めていく意義が無効になったわけではありませんが、新たな理論を知ることは従来の研究に別の視角をもたらすものと考えます。本授業では、ジョナサン・カラー著『文学理論』その他を通じて文学理論の概要を学び、文学テクストをその理論を通して具体的に読んでいきます。本授業は、発表・討議形式を一部取り入れて進めます。分担箇所を1〜2名ずつで読み、意味内容を報告し、受講者で討議を行います。

授業内容
1 ガイダンス
2 「文学とは何か? 文学は重要か?」
3 「教室の中のテクスト1」(R・スコールズ『テクストの読み方と教え方』)
4   実践分析 川端康成「化粧」
5 「教室の中のテクスト2」(R・スコールズ『テクストの読み方と教え方』)
6 「教室の中のテクスト3」(R・スコールズ『テクストの読み方と教え方』)
7 「ジョイスの「イーブリン」の記号論」(R・スコールズ『記号論のたのしみ』)
8   実践分析 川端康成「化粧」
9 「文学とカルチュラル・スタディーズ」
10 「言語、意味、解釈」
11 「レトリック、詩学、詩」
12 「物語(ナラティブ)」
13 「行為遂行的な(パフォーマティブな)言語」

教科書・参考書
 ジョナサン・カラー『文学理論』2003年 岩波書店


2004年度後期

国文学講読B(Readings in Japanese Literature B)

学期 後期
曜日・時限 火・4
標準履修学年 学部3年

授業概要・目標
 明治・大正・昭和・平成の各時代に発表された女性作家の文学テクストを読んでいきます。男性の性を基準に醸成されてきた明治以降のジェンダー(歴史的・社会的・文化的性差)秩序を文学テクストがいかに受けとり、いかに変容していったかについて考えます。フェミニズム批評やジェンダー理論の基礎的な知識を学び、性差に対する理解力・想像力を養うとともに、テクストを一つ一つ丁寧に読み解く作業をつうじ、テクストを読解する技能の習得を目指します。

授業計画
1 ガイダンス
2 樋口一葉「十三夜」(「文芸倶楽部」明治28年12月)
3 与謝野晶子「みだれ髪」(東京新詩社 明治34年8月)
4 平林たい子「殴る」(「改造」昭和3年10月)
5 岡本かの子「老妓抄」(「中央公論」昭和13年11月)
6 林芙美子「骨」(「中央公論」昭和24年2月)
7 円地文子「妖」(「中央公論」昭和31年9月)
8 竹西寛子「鶴」(「新潮」昭和47年1月)
9 大庭みな子「青い狐」(「文芸」昭和48年10月)
10 俵万智「サラダ記念日」(河出書房新社 昭和62年7月)
11 吉本ばなな「血と水」(「小説新潮」平成3年2月)
12 川上弘美「トカゲ」(「中央公論文芸特集号」平成7年春季号)
13 柳美里「潮合い」(「小説トリッパー」平成8年冬季号)
14 綿矢りさ「蹴りたい背中」(「すばる」平成15年11月)
15 まとめ 


国文学演習B (Seminar on Japanese Literature B)

学期
後期
曜日・時限 金・3
標準履修学年 大学院

授業概要・目標

 〈物語〉という特殊な言説の言語形式について考える学問を〈物語論(ナラトロジー)〉と呼びます。本授業では、ナラトロジーを学ぶさいに逸することのできないジュラール・ジュネット著『物語のディスクール』を読みながら、テクスト研究の実践的方法を、具体的にテクスト分析を行いつつ進めていきます。本授業は、受講者の発表・討議を中心に行います。分担箇所を1〜2名ずつで読み、意味内容を報告し、討議を行います。

授業計画
1 ガイダンス
2 順序(物語言説の時間 錯時法 射程と振幅)
3  〃 (後説法 前説法 空時法に向かって)
4 持続(不等時法 要約法 休止法 省略法 情景法)
5 頻度(短起法/括復法 境界限定・周期特定・延長)
6  〃 (内的通時法と外的通時法 交替・移行 〈時間〉との戯れ)
7   -----インターバル テクスト分析----------
8 叙法(物語言説の叙法 距離 出来事についての物語言説 言葉についての物語言説)
9  〃 (パースペクティブ 焦点化 変調 多調性)
10   -----インターバル テクスト分析----------
11 態(語りの審級 語りの時間)
12  〃(語りの水準 メタ物語世界の物語言説 転説法 『ジャン・サントゥイユ』)
13  〃(人称 主人公/語り手 語り手の機能 聴き手)
14   -----インターバル テクスト分析----------
15 まとめ

教科書・参考書
ジェラール・ジュネット『物語のディスクール―方法論の試み』1985年 水声社