新潟県生活科・総合的学習研究会第5回大会(上越大会<2001.8.26.>)発表資料
ポートフォリオ評価について(上越教育大学 木 村 吉 彦)

はじめに
 生活科や総合的な学習にとって、「ポートフォリオ評価」が有効である、という論がよく聞かれます。私もそう思います。しかしながら、「名前」がよく知られ、それなりに先生方の学習もなされている割には、実際に実践が思うように進んでいないのではないでしょうか。そこで、「ポートフォリオ評価」について、意味の確認と具体的な進め方についてまとめてみました。
1.ポートフォリオ(portfolio)とは
「ポートフォリオ」とは、もともと「紙ばさみ(いくつかの書類を一つに束ねるためのクリップ)」を意味しています。この言葉、実はもともと経済用語であり、有価証券(株など)の一覧表を言います。多くの情報を一カ所に集めておく、という意味合いになります。学校教育の場合で言えば、たくさんある子どもの学習の記録(学習シートや作品、写真等)を一つにファイリングしておくことです。パンチで穴をあけファイルにとじたり、透明のプラスチックまたは硬化ビニールなどに挟んでおく場合が多いようです。
2.教育評価への生かし方
ポートフォリオ評価は、子ども一人一人の「個」の育ちをみとるのに有効であると思われます。それは、子どもが自分の学習を振り返り(@)、「自己評価」し(A)、その自己評価に対して教師からの「他者評価」を加え(B)、子どもと教師が共に学習の方向性を見いだす(C)ことができるからです。評価(=子ども理解)と支援(指導)の一体化が図れるということで注目されているわけです。これら4つの作業手順に従って学習の記録を集積していくことで、次の3.で述べる「元ポートフォリオ」が作られます。
上に述べた@〜Cの作業の内、意外とうまくいっていないのがBなのではないでしょうか。子どもの作品や自己評価に対するコメントを教師がきちんとメッセージとして送っているでしょうか。BとCでは「対話」ということがとても大事になります。この「対話」を通した「他者評価」によって、子どもの理解力が養われ、学習方向の決定が容易になります。もちろん、子ども同士の「相互評価」も取り入れたいものです。
3.「元ポートフォリオ」と「凝縮ポートフォリオ」(資料:日本教育新聞<2000.6.9.>)
鈴木敏恵氏によれば、子どもの学習の記録を時系列に収集したものが「元ポートフォリオ」です。それに対して、「凝縮ポートフォリオ」とは、「元ポートフォリオ」の情報の中から子どもが自分の視点に従ってまとめなおした(再構築した)ものです。「凝縮ポートフォリオ」は学習のひとまとまりにおけるその都度の最終段階で行われるものです。「これまでの学習を振り返り、シート○○枚でまとめてみよう」のような課題として子どもたちに提示されることになります。このまとめ作業の中で、子どもたちは自分のこだわりの軌跡を知り、自分の成長の跡をたどり、そして改めて「自分なりの知の総合化」を図るのです。しかし、凝縮ポートフォリオの作成は、かなり高度な知的作業であり、小学校で言えば高学年段階にふさわしいのではないかと考えられます。
 また、ポートフォリオによる学習の記録は、児童の小学校時代の「学びの記録(履歴)」として中学校へ持ち込まれることが望まれます。「総合的な学習」の重複を避けるという意味だけではなく、「生徒理解」の重要な手がかりになります。                                                      

 <2001.8.25.作成> 


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